情報システム部門は、会社全体のIT戦略の策定、システム保守/運営、ユーザーサポート、トラブル対応などさまざまな役割を担っています。しかし、クラウドサービスやデジタルトランスフォーメーション(DX)など時代に変化が訪れている今、情報システム部門のあるべき姿も大きく変わろうとしています。
本記事では、情報システム部門における従来の役割と、今後を見据えた新しい役割について詳しく解説。
今後の情報システム部門への変化に、どう対応すればよいのか、ぜひ参考にしてみてくだい。
目次
1. 情報システム部門に訪れる変化
2021年コロナ禍の今、社会・経済・生活などあらゆる環境が激変しています。
ビジネスとして変化に対応していく中でのIT化、デジタルトランスフォーメーション(DX)への対応は、2018年に経済産業省から「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」が発表された当時よりも、さらなるスピード感が求められる状況となっています。
そういった影響もあり、情報システム部門に変化が訪れています。ここでは、その変化について詳しく2つに分けて説明します。
情報システム部門に訪れる変化
- デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進
- クラウドサービスの急速な普及
1-1. デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、「デジタルによる変革」を表す言葉です。デジタル技術によって、人々の生活をよりよいものに変革することを意味しています。
DXを通して、業務プロセスやビジネスモデルなどを含めた企業の在り方を見直す必要があるといわれているのです。
企業における情報システム部門にも、DX推進の流れが生じてきています。
社内に限らず世界中のどこにいても社員同士がつながり、データを共有できる仕組みの構築など、根本的な変革が求められているといえます。IT技術でどこにいても社員同士がつながることができれば、社員が必ずしも毎日通勤する必要や会議のために出社する必要もなくなります。
結果として、社外での営業活動もスムーズに行えるようになるでしょう。さらに、DXは生産性の向上やコスト削減、時間短縮、働き方の改善につながり、企業や社員にとっても大きなメリットを生むといえるのです。つまり、今後の企業経営を考えたときに、情報システム部門の新たなあるべき姿のひとつとして、DX推進の流れに乗ることは重要といえます。
DXは企業のあり方を見直す動きであり、簡単に実現できるものではありませんが、この難しい課題にどのように立ち向かっていけばよいのかを、今後企業として考えていくことが重要になってきます。
ココがポイント
情報システム部門のあるべき姿として、DX推進の流れは重要といえる。
1-2. クラウドサービスの急速な普及
近年Microsoft AzureやAmazon Web Service(AWS)といったクラウドサービスの台頭により、オンプレミスからクラウドへの流れが起きています。
自社に物理サーバーを置いて、自社でシステムを構築し、保守や更新を行うには膨大な設備投資費と人件費がかかります。さらに、自社で全てのシステムを管理した状態では、テクノロジーの進化に合わせたスピーディーな更新も難しい状況です。また、災害時などBCPの観点でのリスクも大きくなります。
そのため、自社内に置いていたITインフラをMicrosoft AzureやAmazon Web Servicesなどのクラウドサービスに切り替え、業務システムにもクラウド上で提供されるアプリケーションを利用する企業が増えてきています。
多くの企業が導入していたオンプレミス版のIBM Notesのサポート終了によって、Microsoft365(旧 Office365)などのクラウドサービスへの移行が加速しています。
総務省の調べによると、クラウドサービスを一部でも利用している企業の割合は64.7%であり、前年の58.7%から6ポイントも上昇しています。利用したサービスの内容については、「ファイル保管・データ共有」の割合が56.0%と最も高く、次いで「電子メール」(48.0%)、「社内情報共有・ポータル」(43.0%)となっており、あらゆる場面でクラウドサービスを利用していることが分かります。
クラウドサービスを利用している83.2%が「効果があった」と回答していることからも、クラウドサービスによる業務効率化がうかがえます。しかし、これらクラウドサービスの導入から運用までを管理するのもまた、情報システム部門の役割です。普段からインフラ整備等で煩雑な状態で、新しいクラウドサービス導入に向けた知識の習得は困難であるケースも多いと考えられます。
これは、新しい情報システム部門のあるべき姿を考えるうえで、大きな課題となるといえます。
ココがポイント
クラウドサービスを利用している企業は増加しており、急速に普及が進んでいる。
2. 情報システム部門の従来の役割とは
今後の情報システム部門のあるべき姿を考えるうえで、現状の課題を整理していくことは重要です。そのためには、従来の情報システム部門のあり方を一度見直してみる必要があります。そこで次に、従来の情報システム部門の役割について整理・紹介していきます。
これまでの情報システム部門に求められていた役割は、主に以下の4つでした。
情報システム部門の従来の役割
- IT戦略の策定
- システム構築・運営・保守
- 社内インフラの整備
- サービスデスク・ヘルプデスク
2-1. IT戦略の策定
従来の情報システム部門の役割のひとつが、会社の経営戦略や事業戦略に基づいた、システムの企画立案・要件定義です。
社外ベンダーの見積もり検討・選定、およびその後のプロジェクトマネジメントを遂行し、ユーザー部門に対して新しいシステムを開発・提供します。
2-2. システム構築・運営・保守
情報システム部門の主要な役割はシステムの構築ですが、システムを運営・保守していくことも大きな役割です。
システムを維持し、使いやすさを向上させるために、社内ユーザー部門からのリクエストや業務プロセスの変更に応え、既存システムのカスタマイズなどを実施します。
システムを安定稼働させ、会社の事業活動を下支えする役割を担います。
2-3. 社内インフラの整備
情報システム部門は、ネットワーク環境やセキュリティ対策など、インフラの整備も行います。
自社サーバーやネットワークの構築・運用・保守を行いつつ、セキュリティ対策やデータ保全を実施し、万が一の事態に備えています。また、新技術・製品の導入検討や評価を行って、常に社内環境のサービス向上に努める役割を担っています。
2-4. サービスデスク・ヘルプデスク
情報システム部門は、サービスデスク・ヘルプデスクの役割を担うケースも多いです。
サービスデスク・ヘルプデスク業務では、社内ユーザーや顧客からの問い合わせ対応・トラブルシューティングを行います。ツールやシステムの導入サポートのほか、新卒者や転職者へ社内システムの教育を実施し、社員一人ひとりの円滑な業務遂行を支援する役割を持ちます。
以上が、従来情報システム部門に求められてきた役割ですが、現在のクラウド時代において運用・保守業務はその必要性を失っています。また、業務システムについても、SaaSなどのクラウド上で提供されるアプリケーションを利用できるようになっており、企業独自でシステムを構築するということは少なくなっているのが現状です。
従来の情報システム部門の役割と今後のあるべき姿については、【情報システム部に求められる役割と課題解決のための外注戦略】というコラムも以前に詳しく書いておりますので、ぜひあわせてご覧ください。
3. 今後の情報システム部門に求められる役割
2019年4月1日に「働き方改革関連法」が施行され、労働環境の新しい在り方が問われています。また、コロナ禍を経験し、多くの企業で多様な働き方の模索がなされ、実践されるようになりました。
その中でもクラウドで提供される業務システムに、特に注目が集まっています。
クラウドを利用した業務システムサービスは、業務の生産性に関する考え方が先進的であり、しかも随時バージョンアップしていきます。クラウドサービスを取り入れる企業は年々増えており、それによって企業の在り方も急速に変化してきているのです。
このような変化の中、今後の情報システム部門に求められる役割とあるべき姿について、以下2つの観点から詳しくご説明します。
今後の情報システム部門に求められる役割
- 先進的なITツールの活用法を共有する仕組みづくり
- 業務プロセスの見直し
3-1. 先進的なITツールの活用法を共有する仕組みづくり
情報システム部門においてDXを推進していく際には、いくつかの問題が生じる場合があります。
先進的なITツールに対して個人個人の理解度・受容度が追いつかず、会社として変化を受け容れられないことは、DXがうまくいかない、最も大きな要因です。
具体的には、ツールの機能、業務プロセスへの適用法が分からないといった問題。そのことで現場が混乱し、これまでの業務のやり方やワークスタイルから脱却できないといった事態に陥るケースがあります。
これを解決するために必要となる活動が、会社のカルチャーチェンジ、社員一人ひとりのマインドチェンジです。
DX推進は、単にITツールの活用法をナビゲートするだけでは叶いません。それだけでなく、新しいワークスタイルの実現に向けた啓蒙活動や、社内全体の意識改革が不可欠といえます。
業務プロセスや職場の文化・風土というところまで踏み込んで、ユーザー部門に対して意識改革に向けたコミュニケーションを展開していく役割が、DX推進には不可欠なのです。つまり、情報システム部門のこれからのあるべき姿としては、情シスが先導して企業全体を変革していく役割が重要といえます。
情シスが持つIT知識や社内システムへの知見を最大限利用し、経営層を巻き込んで企業を変革していく役割が求められているのです。
ココがポイント
これからの情報システム部門は、先導して企業を変革していく役割を求められている。
3-2. 業務プロセスの見直し
これからの情報システム部門には、ITを活用し既存の業務プロセスを変革する役割が求められています。さらに、IT活用によるビジネスモデルの変革や、顧客確保・拡大といったビジネスイノベーションを生み出すアクションも、求められているといえるのです。
その変化に対応するためには、ユーザー部門の抱える課題、ビジネス環境の変化を自ら察知し、新しい方法を自ら提案していけるような、「攻めの情シス」へのマインドチェンジが必要となります。
現代社会で企業が生き残る術を考える際に注目したい言葉として、「オペレーショナル・エクセレンス」があります。これは、マイケル・トレーシーとフレッド・ウィアセーマが『ナンバーワン企業の法則』という著書において、企業における競争力の源泉として示した言葉です。
オペレーショナル・エクセレンスとは、業務改善プロセスが現場に定着している状態であり、常に洗練された業務オペレーション(業務の遂行・実行)がなされる状態を示します。さらに、そのことにより、他社との関係において競争上の優位にいる状態のことを指します。
オペレーショナル・エクセレンスであることが、現代社会を生き抜く上で特に必要な状態と考えられているのです。つまり、業務プロセスの洗練が企業の競争力を左右しつつある現代において、その役割の大部分を担う情シス部門には、まさに大きな変革が求められていると考えられます。
情シスに求められるミッションが大きく変わりつつある今、情シスはこれらのツールを最大限に活用し、もっとクリエイティブで、もっとアクティブな組織へと生まれ変わる必要を迫られているのです。
ココがポイント
これからの情報システム部門は、ITにより既存の業務プロセスを変革する役割が求められている。
4. 情報システム部門のあるべき姿とは
迫る「2025年の崖」を回避するための施策として、業務効率化を重視しコスト削減をめざす従来型の「守りのIT」に代わって、ITの活用により新たな価値の創出や競争力強化をめざす「攻めのIT」が注目を集めています。
「攻めのIT」は今後の成長戦略に欠かせない要素のひとつといわれますが、両者の違いはいったいどこにあるのでしょうか。
「守りのIT」は、業務に取り組んだ結果としての効率化(1年間で○○%削減を達成など)が具体的な数字で示されるため、リスクの少ない手法といえます。
一方、「攻めのIT」はデジタル化を進めるための製品やサービスを導入するために、場合によっては会社に多額の予算確保を求めたり、投資に対して思うような成果が上がらず行き詰まったりするケースもあるでしょう。
その意味で「攻めのIT」にはリスクを伴う側面があるため、長期的な目標を設定し、達成すべき目標を明確にしておくことが必要です。なお、システムに多額のコストをかけること=「攻めのIT」ではありません。
本記事の前半でも触れたように、有効に活用できないシステム導入は経営を圧迫してしまう恐れもあります。
IT部門はDX実現に必要なコストを正しく試算し、自社にとって最適な道筋を示す役割を担っています。
5. 情報システム部門の課題を解決する情シス代行サービス
デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進により、近年の情報システム部に求められる役割・あるべき姿は大きく転換してきています。
従来担ってきたITインフラやシステムの構築・保守・運用業務は不要となり、今後はデジタルトランスフォーメーション(DX)実現へ向けた社内ユーザーへの情報提供・啓蒙活動を行っていくことがその使命となっていくはずです。
この課題の解決方法はいくつかありますが、その中でも即効性がありコストを抑えて運用できるのがアウトソーシングサービス(業務委託)です。
高い技術力と豊富な支援実績を持ったITベンダーが上層部への答申からITツールの全社展開まで幅広く支援してくれます。今後、企業として現代社会を生き抜くためにも、業務改革・組織改革支援を行うITベンダーの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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