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情シス業務は生成AIで効率化できるのか?活用事例を紹介

昨今知名度や利用率が上がっている生成AIには、OpenAIの「ChatGPT」やMicrosoftの「copilot」、Googleの「Gemini」など、多種多様な種類が登場しています。

そのため、社内業務でAIを使用する場面も増えているのではないでしょうか。AIが身近にある今、情シス業務でも生成AIを利用・効率化する取り組みが増加傾向にあります。

この記事では、情シス業務は生成AIで効率化できるのか、活用状況から効率化できる情シス業務例、実際の活用事例について紹介します。

1.国内におけるAIの活用状況

1.国内におけるAIの活用状況

数年前と比較するとコロナウイルス対策の在宅ワークの導入を機に各企業でさまざまなDX化が進んでいます。その後押しもあり、以前よりも生成AIの導入や新しいシステムや考え方を取り入れることを検討する企業は増えています

しかし、国内におけるAI活用状況は、諸外国と比較するといまだ低い水準にあるのも事実です。

総務省の令和6年版情報通信白書」によると、日本の企業における生成AIの活用方針にて、「活用する方針を定めている」との回答は42.7%です。米国、ドイツ、中国など外国の80%近い水準と比較して、国内のAI活用状況は低いことが示されています。

生成AIの活用状況では、「メールや議事録、資料作成等の補助」に使用しているとの回答が他国では70%以上に対して日本では50%以下にとどまっています。

しかし、日本における生成AI活用による効果・影響については、約75%が「業務効率化や人員不足の解消につながると思う」と回答しており、生成AIに対する期待は高いことがうかがえます。

しかし、生成AIへの期待が高い一方で、「社内情報の漏洩などのセキュリティリスクが拡大すると思う」「著作権等の権利を侵害する可能性があると思う」と回答した企業が多く占めているのも事実です。

日本国内の企業では生成AIの導入は慎重に進められているものの、社内向け業務では生成AIを活用する事例が増加傾向にあるといえます。

2.生成AIで効率化できる情シス業務とは

2.生成AIで効率化できる情シス業務とは

情シス業務のベースとなる部分に人手は必要なほか、一部の人的対応を生成AIで置き換えるのは難しいのも事実です。しかし、生成AIを活用すれば、さまざまな情シス業務を効率化できます。具体的には、以下のような業務を効率化できます。

  • ・問い合わせ対応の自動化
  • ・マニュアル作成と管理
  • ・システム運用・保守
  • ・コンテンツ制作

ここでは、生成AIで効率化できる情シス業務について解説します。

2-1.問い合わせ対応の自動化

問い合わせ対応の自動化も、生成AIを活用することで効率化できる情シス業務のひとつです。企業の問い合わせ対応やヘルプデスク業務において、生成AIやチャットボットの活用が注目されています。

生成AIやチャットボットを活用すれば、24時間365日対応可能な自動応答システムを構築し、よくある問い合わせなどの対応を自動化できます。

なかでも注目を集めているのは、社内データベースとの連携によるRAG(検索拡張生成)です。RAG(検索拡張生成)とは、リアルタイムで資料を検索し検索結果をもとにAIが答えを生成する機能のことで、社内のナレッジに基づいた高度な回答を実現できるのが特徴です。

「PCやネットワークのトラブル」「プリンタ設定」といったトラブルなど、単純な問い合わせ対応に費やしていた時間を削減できるため、オペレーターの負担削減を実現できます。

問い合わせ対応の自動化によって時間が生み出されるため、情シス業務への勉強時間に充てたり、複雑な業務への対応時間を確保したりすることが可能です。

ただし、すべての問い合わせを生成AIで完結することが難しいのは事実です。複雑な問い合わせに対してはAIから担当オペレーターへのエスカレーションが重要となります。とはいえ、生成AIを活用すれば、今までよりも「攻め」の情シスへの後押しとなるでしょう。

2-2.マニュアル作成と管理

生成AIを活用すれば、社内FAQやマニュアルの作成などの煩雑な情シス業務の効率を高めます。既存資料や過去事例を学習し、マニュアル生成や多言語対応や図表、画像生成も用いて資料作成に用いることが可能です。

ソフトウェアの新機能マニュアルや、システム障害発生時の復旧手順書などのマニュアルが容易に作成できるので、マニュアル作成のハードルを下げられます。

その結果、今までは「マニュアルにするまでもないが、ごく稀に業務がストップすることがあった」といった対処法まで効率的にマニュアルを作成できるのがメリットです。

生成AIの活用によって情報を一元管理しやすくなるため、常に最新情報を共有できるのも特徴のひとつ。「このマニュアルは管理されていないから」と参照されなくなる資料も稀に見られますが、効率的に情報を管理できる環境なら、何かあればマニュアルを参照する社風を構築できます。

その結果、情シス業務の負担となっていた単純な問い合わせを減らせます。社員の自己解決能力を高める効果も期待できるため、会社全体にとって有益な効果を生み出せます。

ただし、現状は生成AIのみで情シスの完璧なマニュアルが生成できるわけではありません。一部工程を効率化できるとはいえ、最終的には人の手で問題が無いかを確認する必要はあります。

2-3.システム運用・保守

実は、情シス業務のうちシステム運用・保守も一部作業にAIを活用している事例があります。ログデータや監視データの分析によって障害の初期診断・対応手順の自動提案を行ったり、過去事例の学習データから類似ケースに対する最適な復旧手順を提示したりすることが可能です。

その結果、万が一のトラブル時、ダウンタイムの大幅な短縮効果が期待できます

さらに、監視ツールが取得したOSのエラーメッセージやリソース状況をもとに、対応策を提示する仕組みを構築すれば、障害初期対応の自動化も期待でき、人的ミスの削減や対応スピードの向上にもつながります。

運用レポートの自動生成により担当者の負担を軽減できるのもメリットで、運用コスト削減にも貢献できるため、「積極的にAIを取り入れていきたい」と感じている企業が多く存在しています。

2-4.コンテンツ制作

生成AIはプログラミング分野においても、情シス部門の業務効率化に大きく貢献しています。定型的なコードは自動生成できるため、工数を削減することが可能です。開発者はより複雑なロジックや設計に集中できると同時に、人的ミスの減少効果にも期待できます。

コードレビューやテストの効率化により、バグや脆弱性の少ない高品質なシステム開発へつなぐ架け橋にもなるでしょう。

プログラミングにおけるAI導入で情シス業務の効率化が進めば、結果的に「人材不足の解消」「残業時間の減少」など働きやすさや職場環境の改善にも相乗効果を発揮します。

ただし、完全にプログラミングをAI任せにしてしまうのは危険なので、コーティング知識のある情シス担当者の補助ツールとして導入・運用をおすすめします。

3.情シスがAIを導入した活用事例

3.情シスがAIを導入した活用事例

「AIに仕事を乗っ取られる」と考えてしまう人も少なくありませんが、近年では、すでに情シスを主軸としてAIを導入する事例は多く存在しています。

ここでは各企業が情シスや担当者が主導でAIを導入した事例について紹介します。

3-1.パナソニック コネクト:AIアシスタント「ConnectAI」を開発部門・情報システム部門で積極活用

パナソニックコネクトは、マイクロソフトの「Azure OpenAI Service」を基盤とした会社向けAIアシスタント「ConnectAI」を開発・導入しています。

目標に掲げた「生成AIによる業務生産性向上」「社員のAIスキル向上」「シャドーAI利用リスクの軽減」のすべてを達成。特にソフトウェア開発やシステム運用を担う部門ではAI導入の効果が顕著に現れており、会社全体においても労働時間の削減に大きく貢献しています。

具体的な活用例

  • プログラミング支援:ソースコードの生成、レビュー、デバッグ、リファクタリング作業にConnectAIを活用。開発者は、繰り返し発生する定型的なコーディング作業や、複雑なアルゴリズムの実装に関するヒントを得ることで、開発スピードの向上と品質確保を両立
  • ドキュメント作成・要約:システム仕様書、設計書、テスト仕様書などのドキュメント作成や、長文の技術文書・会議議事録の要約に利用。ドキュメント作成にかかる時間を大幅に削減し、情報共有の効率化
  • 技術調査・問い合わせ対応:新しい技術要素の調査や、社内システムに関する問い合わせに対する一次回答生成などに活用。情報システム部門の担当者は、より高度な問題解決や企画業務に集中できるように

同社では、ConnectAIの活用を通じて、開発者の生産性向上、システム運用業務の効率化、そして社内ナレッジの共有促進を目指しており、「今後も活用範囲を拡大していく方針」と述べています。

3-2.ソフトバンク:全社規模で生成AI活用、情報システム部門でも業務効率化を推進

ソフトバンクは、経営戦略の中核にAIを据え、全社規模での生成AI活用を積極的に推進しています。

情報システム部門においても、その取り組みは例外ではありません。社内向けITヘルプデスクのQ&Aデータ(質問数約3万6,000およびそれに紐付く回答)を連携させ、社内向けに特化した生成AIを活用しています。

具体的な活用例

  • システム開発・運用支援:プログラムコードの生成や修正提案、エラーログの解析、インフラ構成案の叩き台作成、運用手順書の自動生成などに活用。これにより、開発期間の短縮、運用ミスの削減、属人化の解消を図る
  • 社内ヘルプデスク支援:社員からのPCトラブルやシステム利用に関する問い合わせに対し、生成AIが過去の問い合わせ履歴やマニュアルを基に回答案を作成。ヘルプデスク担当者の負荷を軽減し、より迅速で的確なサポート提供を実現
  • 情報収集・資料作成:最新の技術動向の収集・整理、社内向け説明資料の草案作成、会議でのアイデア出しなどに活用。情報システム部門の企画・戦略立案業務を支援

ソフトバンクは、生成AIを「魔法の杖」ではなく「優秀なアシスタント」と捉え、社員の創造性や専門性を補完する形で活用を進めることで、企業全体の競争力強化に繋げています。

3-3.富士通:Salesforceサポートデスクに生成AIを導入、顧客体験と業務効率を向上

富士通では生成AIに着眼し、日本に先立ってリリースされていた「Einstein for Service」をSalesforce製品に関する問い合わせに対応するサポートデスクにおいて導入しています。

具体的な活用例

  • チャットサポートの効率化:「サービス返信」機能により、チャットでの問い合わせに対してAIが適切な返信案を自動生成。オペレーターは、AIが生成した返信案を編集・送信することで、回答時間の短縮と品質の均一化を実現。「会話サマリー」機能により、オペレーターと顧客のやり取りをAIが自動で要約しており、オペレーターは、会話の全体像を瞬時に把握し、より的確なサポートを提供サービス返信機能では導入前の平均処理時間は約20分。想定期待値は12分でしたが、結果は大幅に上回る約2分を記録しています。
  • ナレッジ共有と新人教育:AIが過去の問い合わせ履歴やナレッジベースを学習することで、新人オペレーターでも高度な問い合わせに対応可能。ナレッジ共有の促進と教育コストの削減を実現

結果、要所的に生成AIの導入により、サポート業務にかかる工数を約80%削減。オペレーターは、より複雑な問題や顧客対応に集中できるようになり、顧客満足度の向上に貢献しています。

富士通はSalesforceのAI機能を活用しながら、蓄積したノウハウをもとにSalesforceのパートナー企業として、顧客企業にも課題解決のPoCサービスを提供しています。今後も、先進的な取り組みが続いていくと言えるでしょう。

4.情シスにAIを導入するときの注意点

4.情シスにAIを導入するときの注意点

生成AIを情シス業務に導入すれば、会社全体の業務効率化や労働時間削減など、さまざまなメリットを得られます。一方で、生成AIの導入は慎重に進める必要があり、いくつかのリスクがあるのも事実です。

ここでは、情シスに生成AIを導入するときの注意点について解説します。

4-1.情報漏洩のリスク

生成AIの導入を進める際、情シスがもっとも注意すべきポイントは情報漏洩のリスクです。AIは大量のデータを学習するため、機密情報や個人情報が外部に漏洩するリスクに対して対策を行わなければなりません。

また、AIシステムへの不正アクセスやマルウェア感染により、データが改ざん・漏洩する可能性もあります。特にクラウド型のAIサービスを利用する場合、データの保管場所や処理方法が不明確な場合もネックです。

AIの学習データから社内情報が漏洩しないよう、「オプトアウト設定を必ず確認する」「データの保管場所や処理方法を慎重に検討する」「必要に応じて国内データセンターやオンプレミス環境を利用する」のも選択肢のひとつとなります。

しかし、大手企業が万全に対策していても起きてしまう危険性があるのが情報漏洩です。被害を最小限に抑えるため、さまざまな施策に取り組む必要があります。

また、AIシステムの脆弱性を定期的に診断してセキュリティパッチを適用したり、不正アクセス対策やセキュリティ対策を継続に行ったりするなど、リスクに対して慎重に対応できる準備が必要です。

4-2.社内のITリテラシー

情シス主導の生成AI導入においては、社内のITリテラシーも課題のひとつとされています。AIの特性や限界として「ハルシネーション」があり、誤った判断や情報に基づいて業務を進めてしまうかもしれません。

「ハルシネーション」とは、AIが事実とは異なる情報や実際には存在しない情報を生成する現象を指します。

たとえば、「横浜市にある中華街にはアートリックミュージアムというトリックアートの施設があります」という情報を学習データに用いたにも関わらず、AIは「神戸市にある中華街にはアートリックミュージアムというトリックアートの施設があります」のような誤った情報になる場合や「横浜中華街ではパンダの散歩パレードを定期的に開催しています」と学習データには存在しない情報がインターネット上から入ってしまい事実か検証ができない情報が回答される場合があります。

AIの利用方法や倫理的な考慮事項に関する知識がなく、すべてを鵜呑みにすると法令違反やコンプライアンス違反につながる可能性も懸念されます。

また、従業員のITリテラシーによっては教育にも大きなコストがかかり、「著作権等のリスク」を気にして、より生成AIの利用を避けてしまうケースも。
AIの利用目的や利用範囲、禁止事項などを明確にしたガイドラインを作成し、全社員に周知することが大切です。利用方法や倫理的な考慮事項に関する研修実施なども重要となります。

まとめ

生成AIは情シス主導でさまざまな企業が導入を進めています。しかし、AIの導入には多くの手間が掛かるほか、情報漏洩のリスクや社内ITリテラシーが求められます。手軽にAIを導入したい情シス担当者にとって、いくつかのハードルがあるのも事実です。

それでも、特にヘルプデスクなどの単純な問い合わせ対応では、生成AIの利便性から導入件数が増加傾向にあり、実績を出している企業が多く存在します。

とはいえ、いきなり生成AIを試すことに心理的なハードルを感じているかもしれません。「コストや手間を掛けてもうまく効果が発揮できないかも」「自社に浸透するか不安」「導入を推進できるかどうか分からない」と、頭を悩ませる方も多くなっています。

なかには、情シスの定常業務に追われ新しいシステムを検討する暇もない…というような状況もあるでしょう。

生成AI活用の第一歩として、まずは「手放す」ことから始めてはいかがでしょうか。情シス業務をアウトソーシングで“余白”をつくること、作った“余白”で生成AIの導入・活用するための第一歩にしてみませんか。

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  • この記事を書いた人

中野翔太

船橋事業所の課長を勤めています。2人の子供と遊ぶ時間を大切にしながら、日々仕事に邁進しています。私の知識や経験が、皆様のお役に立てば嬉しいです! 保有資格:MOSExcel2013 Expert、MOSWord2013、MOSAccess2013、MOS2013Master、.COMMaster Advance★★、基本情報技術者、FP3級

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