「このシステムの設定は、あの担当者しかわからない」
「担当者が休むと、IT関連の判断が止まってしまう」
このような状況に心当たりはないでしょうか?
少人数で広範なIT業務を担う情シス部門では、特定の担当者に業務が集中し、知識やノウハウが個人に閉じてしまう「属人化」が起こりがちです。
属人化を放置すると、担当者の急な退職や不在をきっかけにシステムが止まり、会社全体の機能に影響を及ぼす「経営リスク」へと発展しかねません。
この記事では、情シスが属人化してしまう理由から、自社の状態をチェックする方法、属人化脱却に欠かせない具体的なステップまで解説します。
目次
1.情シスの属人化とは?

情シスの属人化とは?
情シスの属人化とは、特定の担当者しか業務の詳細を把握しておらず、周囲から業務内容が見えない「ブラックボックス化」が進んでいる状態を指します。よく見られるのが、以下のようなケースです。
- サーバーやネットワークの設定を、特定の1名しか理解していない
- 各種システムの管理者パスワードが担当者個人で管理されている
- トラブル対応の手順が文書化されず、担当者の経験と記憶に頼っている
属人化状態では、担当者が不在になるだけで業務が止まったり、退職時にパスワードや設定情報がわからなくなったりするなど、実務上の問題が発生するリスクが否定できません。
情シスの属人化を放置すれば、ある日突然システムが停止し、会社全体の機能に影響を及ぼす「経営リスク」に直結する可能性も。ここで重要なのは、属人化は個人の能力や責任の問題ではない点です。
少人数で広範なIT業務を担わざるを得ない組織構造が、属人化の原因となっているケースも多くあります。
2.なぜ情シスは属人化しやすいのか?5つの原因

属人化は、どの部署でも起こり得る問題といえます。しかし、情シスはほかの部署に比べても特に属人化しやすい部門のひとつです。具体的に、情シスが属人化しやすい5つの原因は以下のとおりです。
- 業務過多でマニュアル作成の時間がとれない
- 業務の専門性が高く代わりがいない
- ナレッジを共有する仕組みやルールがない
- 専任部門がなく「ひとり情シス」や兼務が多い
- IT環境の複雑化に管理体制が追いついていない
ここでは、情シスの属人化が起こりやすい原因をそれぞれ解説します。
2-1. 業務過多でマニュアル作成の時間がとれない
突発的なトラブルは予測できないため、「トラブル対応」というタスクが急に増え、日々の業務が圧迫されてしまうのが、情シスが属人化しやすい原因のひとつです。
通常業務だけでリソースが組まれていると、イレギュラーが発生するたびに時間や人的リソースが不足してしまいます。マニュアルや手順書を文書化すべきだと理解していても、目の前の作業を優先せざるを得ず、文書化は後回しになりがちです。
さらに、OSやソフトウェアのアップデートにともない設定や操作の手順が変わった場合も、最新のノウハウが手順書に反映されず、担当者の頭の中だけに残る状態が常態化してしまうことが多くあります。
2-2. 業務の専門性が高く代わりがいない
情シスが属人化しやすい原因のひとつに、そもそもIT人材が不足している点が挙げられます。ネットワークやセキュリティなど、情シス業務には高度で専門的な知識が求められます。
機器のアップデート作業ひとつをとっても、「アップデートのスケジュールを組めるか」「管理画面へのログイン方法を把握しているか」「アップデート後に起きる可能性がある障害を予測できるか」など、専門的な知識と自社のネットワークへの深い理解がなければ作業できないこともあります。
仮にマニュアルを整備しても、それを理解して実務としてこなせる代替要員が社内にいないケースもあり、「任せられる人がいない」という状況に陥ってしまうのも事実です。
「任せられる人がいない」という諦めからマニュアル作成の優先度がさらに下がり、「自分がわかっていれば問題ない」という考えによって属人化が進んでいきます。
この「代わりを用意する」という課題への解決策は、主に次の2つです。
- 社内で情シス担当者の採用を進める
- 情シスのアウトソーシングを利用する
どちらが適しているかは、会社の規模やニーズによって異なります。属人化の脱却を考えている方は、「情シスのIT人材追加」「属人化を避けるためのアウトソーシング」の2つを選択肢として検討しましょう。
2-3. ナレッジを共有する仕組みやルールがない
情シスの属人化は、ナレッジを共有する仕組みやルールが整備されていない場合でも進行します。情報を蓄積・共有するためのツールやルール、ドキュメントの保管場所が整っていない企業は少なくありません。
過去に作成したまま何年も更新されていないフォルダやアカウント情報ファイル、現在は使っていないソフトのマニュアルが残ったまま、といったケースもよく見られます。
マニュアルを作成しても更新ルールがないため、情報がすぐに古くなり、結果的に参照されなくなってしまうのも事実です。情報をオープンにする文化や仕組みがなければ、ナレッジは個人の手元に留まり続け、ほかの社員が確認できない状態になってしまいます。
2-4. 専任部門がなく「ひとり情シス」や兼務が多い
専任部門がなく、担当者が一人または兼務という体制も、情シスが属人化しやすい大きな原因のひとつです。中小企業では「社内のネットワークやセキュリティ管理だけのために部門を作るほどではない」と考えられがちです。
なかには、「情シス担当者が1名のみ」あるいは「ほかの部署・業務と兼任している」ケースが多く存在します。しかし、担当者が1名だと相互チェックの目が入りにくく、業務プロセスが自然とブラックボックス化し、不備があっても気づきにくくなるのも事実です。
退職する場合にも引き継ぎ先が存在しない、もしくは後任が1名のみのことが多く、属人化が解消されないまま放置される構造になっています。後任者も自分にだけわかるメモをマニュアル代わりに残してしまうと、属人化の連鎖は止まりません。
2-5. IT環境の複雑化に管理体制が追いついていない
IT環境の複雑化に管理体制が追いついていないことも、情シスの属人化を招く原因のひとつです。近年はSaaSの普及やテレワークの導入により、管理すべきITツールが急激に多様化・複雑化しています。
システムごとに仕様やアカウント管理方法、料金体系が異なり、全体像を把握しきれないまま利用しているケースも珍しくありません。
導入した担当者しか実態を理解していない状態が生じると、管理体制だけでなく契約までブラックボックス化し、なかには支払う必要のない旧サービスの料金を払い続けていた事例もみられます。
利用端末や機器の管理だけでなく、利用サービスのアカウントや契約ライセンスといったIT資産の管理も、重要な情シスの業務です。このとき、情シス担当者しかわからない状態だと、部署単位、ひいては会社全体で業務が滞るリスクが考えられます。
だからこそ、情シス担当者を増やす、またはアウトソーシングを利用するという解決策によって、新任者や委託先にもわかるマニュアルを整備し、属人化を防ぎながら実用的な運用を実現することが大切です。
3.自社の情シス属人化リスクを測るチェックリスト

自社の状態を確認してみましょう。当てはまる数を数えながら、以下の10項目をチェックしてください。
- 特定のIT担当者が休むと、復旧できないシステムや進まない業務がある
- システムの管理者パスワードを、特定の1〜2名しか把握していない
- 過去に発生したITトラブルの対応履歴が文書として残っていない
- 退職予定者から後任への引き継ぎに、3か月以上の期間が必要だと感じる
- マニュアルが存在しない、または1年以上更新されていない業務がある
- 社員からのPC設定やエラー対応の問い合わせが、特定の担当者に集中している
- 情シス担当者が「忙しい」という理由で、新しいITツールの導入が進まない
- 導入しているSaaSやクラウドツールの全体像(契約状況やアカウント数)を誰も把握できていない
- ベンダーや外部パートナーとの連絡窓口が、特定の担当者のみになっている
- 経営層が、情シス部門の具体的な日々の業務内容を把握していない
簡単なチェックですが、いかがでしたか。当てはまった数ごとに、リスクの度合いを確認してみましょう。
0〜2個:低リスク
3〜6個:中リスク
7〜10個:高リスク
4.情シスの属人化を放置するリスク

情シス業務が属人化すると、小さなリスクが積み重なり、結果として会社全体の業務効率に大きく影響する可能性もあります。具体的に、情シスの属人化を放置するリスクは以下のとおりです。
- 担当者の不在や退職による業務停止リスク
- トラブルやインシデント時の初動対応の遅れ
- 知識やノウハウの消失による復旧コストの増大
- 特定の担当者への負荷集中と疲弊
- 業務プロセスのブラックボックス化と品質低下
ここでは、情シスの属人化を放置するリスクを詳しく解説します。
4-1.担当者の不在や退職による業務停止リスク
情シスが属人化するもっとも大きなリスクは、担当者がいないだけで業務が止まる点です。重要なIT判断や復旧作業を一人に依存していると、休暇や出張で席を外すだけでも社内全体が滞ります。
場合によっては取引先やお客様にまで影響が及び、信用を損なう事態にもなりかねません。
さらに深刻なのが、突然の退職や休職です。情シス担当者も一人の人間であり、病気や不慮の事故は誰にも予測できません。引き継ぎのないまま離脱されれば、システム運用そのものが続かず、事業活動まで止まってしまいます。
4-2.トラブルやインシデント時の初動対応の遅れ
情シスが属人化していると、緊急時の初動が決定的に遅れてしまいます。障害やサイバー攻撃が起きたとき、対応できる担当者が一人しかおらず、その人が不在だった場合にトラブル対応が後手に回ってしまうのも事実です。
手順を知る人間が社内にいなければ、復旧までの時間は大きく延びます。マニュアルがあっても、保存場所を誰も知らない、読んでも実行できる人がいない、というケースも珍しくありません。
特にセキュリティインシデントでは、初動の遅れがそのまま被害の急拡大に直結します。誰が見ても着手できる体制を、平時から整えておく必要があると言えます。
4-3.知識やノウハウの消失による復旧コストの増大
属人化したナレッジは、情シス担当者の離脱とともに会社から消えます。本来なら長い年月をかけて蓄積されるはずの技術的な知見や認証情報が引き継がれず、退職・休職を機に失われるケースは少なくありません。
いったんナレッジが消えると、仕様をゼロから調べ直すために多大な時間と費用が発生します。情シス未経験の社員が後任になれば、不慣れなまま現状把握から始めるほかなく、負担はさらに重くなります。
通常業務やトラブル対応の合間に進める作業のため調査は長期化し、後回しにされがちです。情シスの属人化を放置すれば、見えにくいコストとして企業にのしかかります。
4-4.特定の担当者への負荷集中と疲弊
情シスの属人化は、担当者一人へ過度な負担を集中させます。業務を分担できず、相談相手もいない状態が続けば、精神的・肉体的なプレッシャーは増す一方です。
加えて、情シスの業務は多岐にわたり成果が見えにくいため、評価にも反映されづらく、モチベーションの低下を招きます。疲弊が限界を超えると、休職や退職に至り、誰にも引き継がれないまま連絡が取れなくなる最悪の事態も起こり得ます。
悪循環を断ち切るには、担当者の増員や業務の分散が欠かせません。
4-5.業務プロセスのブラックボックス化と品質低下
属人化が進むと、業務の質そのものが落ちていきます。情シス担当者ごとに我流で作業を進めるため、非効率な手順が見直されないまま放置されてしまう事例も珍しくありません。
「自分さえわかればよい」という意識からマニュアルが作られず、本人にしか読めないメモ程度の記録しか残らなければ、ほかの社員は同じ作業を再現できないのも事実です。
業務の透明性が失われた組織では、プロジェクトの遅延や運用品質の低下も避けられません。情シスの属人化解消は、リスク回避だけでなく業務品質の底上げにも直結します。
5.情シスの属人化を解消する3ステップ

情シスの属人化は、正しい順序で進めれば確実に解消へ向かいます。やみくもにマニュアルを作るのではなく、「現状を見える化し、資産化し、業務を切り分ける」という流れが、再発防止の鍵を握ります。
ここでは、属人化を解消する具体的な3ステップを紹介します。
ステップ1:業務の棚卸しと可視化
最初に取り組むのは、ブラックボックス化した業務の洗い出しです。
誰が・何を・どれくらいの頻度で担っているのかを、使用ツールや保有権限も含めてリスト化します。さらにタスクを細かく分解すれば、どの部分が特定の個人に依存しているかが見えてきます。
ステップ2:マニュアル化と標準化
可視化した業務は、誰でも再現できる「組織の資産」へと変換します。ここで大切なのは、操作手順を並べるだけで終わらせない姿勢です。作業の背景やトラブル時の判断基準まで盛り込めば、経験の浅いメンバーでも迷わず動ける環境を構築できます。
あわせて、更新の仕組みを日常業務のフローに組み込んでおくと、情報の陳腐化を防げます。特にアカウント管理情報は毎月の入退社で変動するため、マニュアルに限らず定期的かつ確実に更新しておきましょう。
業務内容のマニュアル化・標準化こそ、情シス業務の属人化を防ぐ大切なステップです。
ステップ3:コア業務とノンコア業務の切り分け
最後は、業務の性質に応じた仕分けです。限られたリソースを活かすには、意思決定が必要な業務と、手順化・自動化できる定型業務とを明確に分けます。仕分けが済めば、対応範囲を複数の社員で分担できるようになります。
ノンコア業務を外部へ手放すことで、属人化を根本から解消しながら社内担当者の負担を軽減し、生まれたリソースを事業の成長につながるコア業務へ注力できます。
6.コア業務とノンコア業務の切り分け基準

属人化を解消する決め手は、コア業務とノンコア業務を正しく切り分ける判断にあります。分類を誤ると、外部化すべき業務を抱え込んだり、社内に残すべき判断業務を手放したりしかねません。
ここでは、それぞれの定義と具体例、迷ったときの基準を整理します。
6-1.コア業務の定義と具体例
コア業務とは、自社のビジネスへの深い理解と、社内での意思決定や調整を要する業務です。外部へ丸投げできず、社内人材が担うべき領域を指します。
具体例は次のとおりです。
- 中長期的なIT戦略やDX推進の企画
- 全社的なセキュリティポリシーの策定と評価
- 新規システム導入時の要件定義やベンダー選定の最終判断
- 経営層や他部門とのIT投資に関する調整
6-2.ノンコア業務の定義と具体例
ノンコア業務は、手順が定まっており、マニュアル化や外部化が可能な定型業務・運用保守業務です。属人化の温床になりやすいため、標準化したうえで手放していく姿勢が、解消への近道になります。
代表的なものは以下のとおりです。
- 社員からのPC操作やシステム利用に関するヘルプデスク対応
- 入退社にともなうPCのキッティングやアカウントの発行・削除
- サーバーやネットワークの日常的な死活監視
- IT資産(ハードウェア・ソフトウェアライセンス)の台帳管理
6-3.判断に迷ったときの3つの基準
ある業務がコアとノンコアのどちらにあたるか迷ったら、次の3つの基準で見極めましょう。
基準1:手順書に落とし込めるか
イレギュラーが少なく、手順書さえあれば誰でも同じ結果を出せる業務は、ノンコア業務と判断できます。
基準2:社外の人間でも品質を担保できるか
自社固有の文化や社内事情に左右されず、技術的・事務的なスキルだけで解決できるなら、外部化が可能なノンコア業務です。
基準3:経営判断や事業の優位性に直結するか
成果が競争力の向上や売上増に直接つながる業務は、コア業務にあたります。逆に、システムを止めない・現状を維持するといった「マイナスをゼロに戻す」性質の業務は、ノンコア業務に分類されやすい傾向があります。
7.情シスの属人化を早期に解消するにはノンコア業務のアウトソーシングがおすすめ

情シスの属人化は、担当者個人の負担にとどまらず、企業の事業継続まで脅かす経営リスクです。「いつかやらなければ」と先送りにせず、まずは業務の棚卸しと、コア業務・ノンコア業務の切り分けから着手しましょう。
切り分けたノンコア業務を早期に手放す判断が、属人化を根本から断つ最短ルートになります。その有効な選択肢が、アウトソーシングの活用です。
社内のITリソース不足や情シスの属人化にお悩みなら、あらゆる情シス業務の代行に対応する「トータルITヘルパー」にご相談ください。トータルITヘルパーが提供する主なサポートは、次のとおりです。
- 日常的なヘルプデスク対応:社員からの問い合わせやPC・システムのトラブルに、リモートと訪問の両面で対応します。
- 業務システムサポート:当社の取り扱い外のサービスも、契約元への確認まで代行して解決へ導きます。
- インフラの保守・運用:サーバーやネットワークの監視・保守を担い、安定稼働を支えます。
- IT資産管理:端末やソフトウェアライセンスの台帳を整備し、契約・コストの最適化につなげます。
- アカウント改廃:入退社や異動にともなうアカウントの発行・削除を、抜け漏れなく処理します。
- PCのキッティング:新規端末の初期設定をまとめて代行し、配備までをスムーズにします。
ヘルプデスクプランであればPC1台2,000円からと、低コストでご導入いただけるのも魅力です。またトータルITヘルパーでは、お客様のご要望や規模に合わせて、ほかにも柔軟に対応できるカスタマイズプランをご用意しております。
「何から外部に頼めばいいかわからない」「業務の切り分けから手伝ってほしい」という段階からのご相談も歓迎です。情シス部門の負担軽減と属人化の解消に向けて、まずは一度トータルITヘルパーへお問い合わせください。

