あらゆる企業のITインフラを支えるのが、需要の高い情報システム部門の仕事です。
この仕事には年収が高いイメージを持つ方も多いため、情報システム関連の業種への転職や就職を考えている方もいるのではないでしょうか。
とはいえ、すべての情報システム関連の仕事で必ずしも高い年収が得られるわけではなく、スキルの専門性や社内でのポジションなど、さまざまな要素が年収に関係してきます。
本記事では、情報システム関連の仕事の年収を職種別に紹介し、それぞれの特徴について解説します。
今後身につけるべきスキルやキャリア形成の方向性が明確になるので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.情報システム部門の年収を左右する3つのポイント
転職を考えている人が気になることと言えば、転職後の年収ではないでしょうか?
IT系の年収はメディアの影響もあり高く見られがちですが、実際には全ての方が高年収を得ているわけではありません。
それぞれの職種により得られる報酬は、下記のポイントによって大きく異なります。
- 企業の予算・利益
- スキルの専門性
- 社内でのポジション・雇用形態
この章では上記の3項目に注目し、情シスの年収を左右するポイントについてそれぞれ詳しく解説します。
1-1. 企業の予算・利益
従業員の報酬は、属する企業の予算と利益によって大きく左右されます。
一般的に、大企業の方が中小企業やベンチャー企業と比べると予算も利益も大きく、従業員の平均年収も高くなります。
もちろん、全ての企業に当てはまるわけではありませんが、中小企業・ベンチャー企業・大企業の順で年収が高くなる傾向にあることも事実です。
このように、大手企業に転職すれば年収を上げられる可能性は高くなります。さらに、大手企業に転職するメリットとして福利厚生が充実している点も挙げられます。
しかし、中小企業の方が技術力を磨きやすい職場環境にあり、転職を検討する際は年収だけにとらわれずに、自身のキャリア形成にマッチした企業を選ぶことが重要です。
1-2. スキルの専門性
ITエンジニアの年収には、これまで培ったスキルや経験が大きく影響します。
当然、専門性の高いスキルを持つ技術者の年収は高くなる傾向にあります。そのため、未経験でエンジニアへと転職する場合、給与基準は最低ラインからのスタートです。
転職前にセミナーや専門学校でITに関する知識を学習していても、実務経験がなければ遂行することが難しい業務が多いため、即戦力として活躍することは難しく、高年収は見込めません。
IT業界で年収を上げるためには、常に最新の情報にアンテナを張り、学習を続ける必要があります。自身のスキルアップをするための努力は欠かすことのできない要素です。
つまり実際の業務を行いながら徐々にスキルアップし、自身の価値を高めることが高収入に繋がります。
ココがポイント
IT業界で年収を上げるためには、最新の情報に注目し学習を続ける必要がある。
1-3. 社内でのポジション・雇用形態
社内における自身のポジションや役割、雇用形態によっても収入は大きく異なります。
管理系職種であるプロジェクトマネージャーやプロデューサーなどは、高い年収得ることができます。コンサルタントで約930万円、プロジェクトマネージャーは約890万円程度の平均年収を得ているというデータもあります。
一方で実務を担当する顧客サポートやヘルプデスクは約391万円、コンテンツクリエイターやデザイナーが約410万円程度の平均年収となっており、前述の職種と比較すると給与面で大きな差が存在します。
ITエンジニアについては、SE(システムエンジニア)やプログラマーとして実務をこなしながら経験を積んでいき、管理系やアーキテクト系にキャリアアップしていくというキャリア形成が多くみられます。
そうしたキャリアアップを重ねることで、収入も上げていくことができます。
雇用形態によっても収入は異なります。
例えば、正社員としてSEで働き、ある程度以上の実績を積み上げたら、フリーランスのSEに転身することで収入アップを目指すという手段もあります。
フリーランス案件の中には、月額で100万円以上の報酬を得ている技術者も存在します。
当然受注数が多ければ年収は上がりますが、フリーランスとして成功するためには、SEとしての専門スキルはもちろん、自ら仕事を獲得するための営業力やクライアントと円滑に付き合うためのコミュニケーション能力など、事業者として活動するための能力も必要となります。
2.情報システム関連職種の年収を解説
経済産業省が平成29年に発表した「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」によると、IT人材の給与は業種によってばらつきがあるようです。
それぞれの業種における、平均年収を見ていきましょう。
2-1. 顧客サポート・ヘルプデスク
顧客サポート・ヘルプデスクの平均年収は390.9万円と、ITに関わる職種としては最も低い給与水準となります。
この職種は、企業が設置しているサポートデスクであり、お客様向けのサポートデスクと社内向けのヘルプデスクに分けられます。
どちらもソフトウェアやシステムについて疑問点や不明点がある場合の問い合わせ先となり、電話やメールで回答する業務です。
平均年収が低い大きな理由は、人件費をコストと見る慣習があり、外注化をしたり、パートやアルバイトの社員でまかなったりすることが一般的になっているからです。 また、最近ではチャットボットを利用し、よくある簡単な質問に対しては定型文を自動で返答するサービスも展開されています。
今後AIと置き換えられてしまう可能性が高い職種ですので、給与の底上げは期待できません。
2-2. システムエンジニア
前述の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」によると、システムエンジニアの平均年収は568.5~603.9万円と幅があります。
これはシステムエンジニアといっても業務が多岐にわたっており、どのようなシステムを開発・実装するのかによって必要とされるスキルが異なるためです。
しかし、現在のIT人材の不足の影響を受け、システムエンジニアという職種はますます需要が高まり、将来性のある職種と言えるでしょう。
2-3. 営業・マーケティング
前述の同調査によると、営業・マーケティングの平均年収は682.1万円です。
一口にITの営業といっても、自社で開発したシステムやソフトウェアの拡販、コンサルティングサービス、IT人材の派遣など、扱うサービスは多岐にわたります。
さらに、そのなかでも電話営業を行う部門やベンダーに対して営業を行う部門など、業務内容はさらに細かく分類されます。
世の中にはあらゆる分野の営業職がありますが、IT営業はその中でも比較的高年収を得ることができる職種です。
これは扱う商材が比較的高額であり、その分年収も高くなるためです。
マーケティング職については、中小規模のIT企業では営業職を担当する社員が兼任していることが多く、IT分野におけるマーケティング職を専任で抱えているのは大手企業がほとんどです。イベントやセミナーの企画・開催・運営やパンフレットの作成、メルマガの送信などがメイン業務となります。
元々、時には数億円もするような案件も存在するため、クライアントがインターネットで情報収集を行ってこなかったという背景もあり、Webマーケティングにはあまり力を入れていない企業が多く存在しました。しかし、最近ではWebマーケティングに注力する企業も増えてきました。
前述したとおり、専任のマーケティング職を雇用しているのは大手企業が多いため、年収も高くなる傾向にあります。
2-4. IT教育
同様に、IT教育の分野を専門とする方の平均年収は、同じ調査において651万円となっています。
この職種で代表的なのがPC教室などのインストラクターです。
その他に企業からの依頼を受けて、従業員にITスキルやノウハウを身につけさせるための研修を行う講師、教育団体や地方自治体で働くIT講師やITインストラクターもいます。
通常PC教室のインストラクターなどはそれほど高い給与は見込めませんが、企業向けの講師の中にはWebマーケティングやデータサイエントなどの高度な研修を行う場合もあり、そういったスキルを保有している場合は高年収を得ることが可能となります。
2-5. ITコンサルタント
同調査の結果によると、ITコンサルタントの平均年収は928.5万円です。
ITコンサルタントは、企業の課題の洗い出し・分析・要件定義を行い、課題を解決するためのシステム導入や運用ルールの策定などを提案する職種です。
コンサルタント自身がシステム開発を行うわけではありませんが、当然ITに関する知識や論理的思考が求められます。
実際、SEはコンサルタントからの指示を受けてシステム開発にあたるので、システム開発の最上流工程を担っているとも言えます。
そのためクライアントに対する提案力やコミュニケーション能力、多くのスタッフをまとめるためのリーダーシップなど高い能力が必要です。さらには、責任範囲もプログラマーやSEより広いため高年収を得られます。
2-6. プロジェクトマネージャー
同様に、プロジェクトマネージャーの平均年収は891.5万円となっています。
プロジェクトマネージャーとは、プロジェクトの大小にかかわらず、プロジェクトの進行を管理する責任者です。
開発するシステムの規模に応じて、予算やスケジュールの決定、メンバーのアサイン(指名・配属)などを行い、プロジェクト全体の進捗を管理する職種です。
ITコンサルタントが案件を獲得し、実際にプロジェクトがスタートアップする段階でアサインされます。
予算やプロジェクトメンバーの配置などしっかり計画を立て、利益を生み出すためのマネジメントを行い、プロジェクト途中での仕様変更やスケジュールの調整など、クライアントとの交渉が必要になるような場面も多く、高いマネジメント能力と交渉力が求められます。
プログラマーやシステムエンジニア、プロジェクトリーダーなど、基礎となる経験を積んだうえで、プロジェクトマネージャーとして活躍するのが一般的です。
プロジェクトの成功のカギを握る立場であり、高い能力が求められる重要なポジションですので、年収1,000万円を超えるプロジェクトマネージャーも多く存在します。
2-7. 高度システムエンジニア
高度システムエンジニアの平均年収は778.2万円となっています。
基盤設計担当やITアーキテクトとは、システム全体をデザインし設計する役割を担っています。
プロジェクトのメインメンバーとして、プロジェクトマネージャーと密にコミュニケーションを取りながら、業務を遂行していく重要なポジションです。
より難易度の高い作業を行うため、通常のSEやエンジニアに比べて給与は高くなります。
出典:経済産業省「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」平成29年8月21日
3. 情報システム部門の仕事で年収をアップするためには?
IT関連業務を行うなかで、年収をあげるためには自身のスキルアップも重要ですが、その他の要素も大きく年収を左右します。
- 情報技術のトレンドを常に追い続ける
- マネジメント能力をつける
- 場合によっては転職も考慮する
ここでは上記の項目に焦点を当てて、解説していきます。
3-1. 情報技術のトレンドを常に追い続ける
IT業界の発達のスピードはとても速く、トレンドは日々変化していきます。
ITをビジネスの活かそうという動きも年々加速しており、これまで当たり前のように利用していたサービスがどんどん新しいものと置き換えられていきます。
そのため常に最先端のトレンドに対して情報を仕入れることが重要です。
現在ではIoT(モノのインターネット:Internet of Things)やSNSを利用してビッグデータを集め、AI(人口知能)によって分析を行い、企業としての方向性を定めるビジネスモデルが確立されていますが、実際にこれらの作業を行うことのできる人材は不足しています。
このような知識や技術を普段の業務から得ることは難しく、自主的なスキルアップが求められます。
常に最新のトレンドにアンテナを張り、自分自身の価値を高める動きが必要となります。
ココがポイント
IT業界のトレンド変化はとても早いため、自主的に最新の知識や技術を得ることが求められる。
3-2. マネジメント能力をつける
プロジェクトマネージャーなどシステムエンジニアの上位職に就きたい場合、プロジェクト全体の進行・管理を行うためのマネジメント能力が必要となります。
プロジェクトの途中で突発的に仕様変更を強いられたり、スケジュールの変更を行わなければならなかったりする時などにも冷静に対応し、利益を守ることが求められるのです。
3-3. 場合によっては転職も考慮する
転職は年収を上げるために最も期待できる方法です。
現在勤めている企業でも自身のスキルアップや実績を積んでいけば、給与を上げることは可能です。
しかし、これには時間もかかり、あまり大きな変動は期待できません。
評価をする会社自体を変えれば、より大きく年収を上げられる可能性があります。
優秀なIT人材を欲している企業は数多くあり、人材の確保のためにそれ相応の待遇を用意してくれます。
そのため、十分な知識と経験を有しているのであれば、転職により収入を大幅に上げられる可能性があるのです。
4. まとめ
IT業界の給与は一般的に高水準と言われており、一般的なサラリーマンより多くの年収を手にしている方が多くいらっしゃいます。
しかし、IT業界の中でも職種や企業の規模によって収入に大きな差があることも事実です。
現在ではサポートデスクやデザイナーなどの業務は、より単価の低いフリーランスが担うことが多くなりました。
今後IT業界で年収を上げたいのであれば、自身が持つ高いスキルを証明できるような資格を取得することをおすすめします。
また、マネジメント能力や交渉力を身につけ、より高度な業務を任されるマネジメント職を目指すことも年収アップにつながります。
常に自身の価値を高めることを追求し、時には転職やフリーランスになることを視野に入れることで年収を上げることが可能となるのです。